コンビニやスーパーで買ってきた総菜をお皿に並べることで味や気持ちが変化するように,ペットボトルや缶の中身はグラスやカップに注ぐことをおすすめします。
そうすることで,注ぐときの音や液体の色合いを楽しめるだけでなく,口当たりや香りも良くなることで,飲むという行為がより豊かなものに変わることを実感できるはずです。
そこで今回は,我が家にあるグラスやコップの中から,お気に入りのものを5種類紹介します。
使い勝手はもちろん,メーカーの歴史についてもみていきましょう!
リーデルのワイングラス
ワイングラスと言ったらリーデル(RIEDEL)が有名です。
オーストリアのメーカーで,その創業は最初のガラス工房がボヘミア(元チェコ共和国)に建てられた1756年にまで遡りますが,数多の戦争を経験する中で工房が焼かれたり経営者が捕虜にされるなどの大事を乗り越えてきたグラスでもあります。
機能より見た目重視の流行を追わず,装飾を施さずに繊細かつ精巧なワイングラスを作るという理念は1960年代に打ち出され,グラスを大きくしたのもリーデルならではの試みです。
ちなみに,会社名はリーデル家一代目のヨハンクリストフリーデルに由来します。
様々な形状をしたグラスは高級なものに分類されるクリスタルガラスで,ブドウの品種ごとの「香り・味わい・バランス・後味」というワインの4感覚を十分に引き出してくれるところが特徴です。
同じワインであっても別のグラスに入れて飲むと味が違うということで,ボトルに入ったワインの色や香りや味わいにだけ注意するだけでは不十分だということを教えてくれます。
特にボウルの形状・サイズ・口径が重要ということで,多くのバリエーションを用意して,多くの専門家の投票という形で選抜されるわけですから,良いものが生まれるのは必然でしょう↓
リーデルのワイングラスは,基本的に以下のように分類できます↓
リーデルのワイングラス
カベルネ系:タンニン強く酸味控えめな赤ワイン用
ピノ・ノワール系:タンニン控えめで酸味が強い赤ワイン用
リースリング系:酸味の強い白ワイン用
オークド・シャルドネ系:酸味控えめな白ワイン用
シャンパーニュ系:シャンパーニュやスパークリングワイン用
最初に示した画像が,まさにこの順番に並べたグラス5種です。
なお,実際はワインに限らず,あらゆる飲み物に合うグラスが用意されており,同じ種類に属するグラスも複数あるので,自分の用途に適したものを少しずつ揃えていくことになるでしょう。
ちょうど先日,来客があったのでグラスを用意したのですが,そのときには,ヴィノムシリーズ(機械生産なので手頃な価格が魅力)のピノ・ノワールとシャンパーニュ,そして変わり種として,オヴァチュアのビール用グラスを使いました↓
全体的に広い印象のグラスに赤ワインを注ぐと,空気と触れる面積が広くなるからでしょう。
香りが強く感じられます。
飲み口の形状により,ワインが舌先に当たるようになっているので,強い酸味と果実味のバランスが整った味になるという仕組みです。
逆に,シャンパングラスは炭酸が抜けにくくなるよう,細長い作りとなっていて泡が美しく立ちます。
我が家では毎年クリスマスのときに使うのが定番です↓
ただし,最新のものはフルート型からやや丸みを帯びた形状になっていて,泡だけでなく香りも一緒に楽しめると言います。
一方,ビール用のグラスは作りが面白く,350ml缶を3度で注ぐとビールが一番おいしく飲める黄金比(泡3:ビール7)になるのが特徴です。
基本的には水で洗うだけで十分なのでしょうが,スポンジを入れにくかったりガラスが薄かったりで扱いづらいという弱点があります。
もっとも,こうした形状は独特の口当たりや味を生むためにはどうしても必要となるので,特別な時間のときには惜しまずリーデルを使うというのがマイルールです。
クロスもそれ専用のものを買っていますが,指紋が付きにくく磨きやすいように思います。
スガハラのコーヒーグラス
リーデルのグラスに関連して,国産のガラスメーカーであるSghr(スガハラ)を紹介しましょう。
創業は1932年,工房は1960年代から千葉県の九十九里にあります。
一貫して職人の手仕事にこだわり,現在までに4000種類以上の製品を世に出してきました。
HPを訪れると,グラスや食器から始まり花器やアクセサリーに至るまで,使い手の暮らしを彩り寄り添ってくれる逸品の数々を目にすることができます↓
私のお気に入りはスガハラのコーヒーグラスで,「ここち」という名前の付いたものです。
兵庫県にあるゆげ焙煎所とのコラボで,「透明なグラスに入ったコーヒーをテーブルに置き,その不思議な形状を眺めつつ読書を楽しむ」ことを意図して作られたということで,耐熱ガラスではないのですが温かいコーヒーをたっぷり注ぐことができます(365mlまで)↓
普段から沸騰したお湯を直接注いでいますが,割れる感じはありません。
重さは結構あるのですが,それだけに安定感があります。
そもそも,コーヒー用のカップで飲む際にはハンドルをつまむように持つことがマナーとされているのですが,こちらはステム部分をつかむ感じになり,筒状になっているのは冷めにくさと香りが立つことを意図しているからです。
耐熱ガラスを使った市販品は他にも持っていますが,ガラスがすぐに着色してしまい,見た目が気分を損なってしまうところが残念だと思っていました。
その点,スガハラの製品には高級感が漂い,中の液体の色が映えるので,コーヒー以外にも紅茶やソフトドリンクを注いで使うこともあります。
セットで使うとお洒落かと思い,同じスガハラの菓子受け的な小皿も買ったのですが,ポテトチップスのような色味とデザインでおすすめです。
ウェッジウッドのティーカップ
イギリスで1759年に開窯したのがウェッジウッドで,「英国陶工の父」と呼ばれるジョサイア・ウェッジウッドの名前に由来します。
ブルーの素地に白い浮き彫り模様を焼き付けたものが定番ですが,ボーンチャイナのティーカップやソーサも使い勝手が良く,ゆったりとしたお茶の時間を楽しむのにぴったりです。
公式サイトをのぞいてみると,「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)を上げる」という言葉が見られたり,「ジュースを飲んだっていいじゃない」といった遊び心を感じさせるブランドに変わってきています。
我が家にあるものは,昔,旅行した記念に購入したもの(GLEN MIST)を長年使っていて,デザインこそ地味かもしれませんが,口当たりは優しく,ティーポットも同じデザインで揃えていて,中の紅茶は長い時間冷めにくいです↓
ティーカップは,先のリーデルの話ではないですが,口径が広く白い器になっていて,これもまた味以外の香りや色を楽しむためです。
容量は200mlほどのものが多く,本来のアフターヌーンティーが女性の社交の場であるということもあって,デザインは優美かつ繊細なものになっています。
たくさんの種類がありますが,ソーサを裏返すとバックスタンプのところでシリーズ名や素材を知ることが可能です。
なお,我が家ではピーターラビットのお皿をクリスマスに買っていたりします。
是非お気に入りの1セットを探してみてください。
能作の錫製カップ
私が能作について知ったのは比較的最近なのですが,素材に錫(すず)を使ったカップや酒器の他,真鍮や青銅の製品もあります。
所在地は富山県の高岡市ですが,町全体が鋳物生産で有名です。
1916年に製造を始めましたが,1984年に入社した能作克治氏の発想で現在の地位があるとのことで,伝統工芸としてのモノづくりに終始しつつも,時代に合った製品を開発することの大切さをうかがい知ることができます。
あえて他の金属を混ぜて硬度を持たせず曲げられる錫であるところも氏によるアイディアで,例えば以下の「ぐい呑」というお猪口は,100%錫の特徴である抗菌作用やイオンの効果で飲み物が腐らず味がまろやかになり,熱伝導率の高さから,手で持った時に中の液体の温度がすぐ伝わるのが特徴です↓
大吟醸はもう水であるがことく,ぐいぐい呑めます(実際は,普通酒・本醸造酒・生酒との相性が抜群とのことです)。
冷蔵庫で数分冷やすか,氷と一緒にドリンクを注げばすぐに冷たくなりますし,熱燗を注ぐと暖かみを感じます。
延性のある金属なので割れる心配がないところがとにかく扱いやすく,普段使いしているNAJIMIタンブラーは,親指があたる部分が予め窪んでいて,初めてみる人は驚きますが,ちょっとした遊び心を感じ取ることができるものです↓
ソフトドリンク以外にも,水割りやロックにはこちらを使います。
ビールの泡も滑らかなものが作りやすいです。
少しずつ錫が持つ人の手に合わせて形を変えていくなんて,ロマンチックではありませんか。
実際,錫は金や銀に続く高価な金属なので見た目にも良く,我が家で能作を知った友人たちからは,後日,「自分の家にも買ったよ」という報告を受けることがあります。
筒茶碗
番外編として,茶器である筒茶碗を紹介しますが,私は最近,白湯を飲むのにハマっています。
南部鉄器の鉄瓶でお湯を沸かして入れるのですが,ちょうどお抹茶用の茶碗があったので,白湯専用として使ってみたら雰囲気が出て,毎回上の黒筒茶碗で飲むようになりました。
確かに,お茶会でお抹茶を入れる前にも白湯を入れることがあるので,それほどおかしなことではないかと思います。
古民家カフェなどで,こうした茶碗に入った飲み物が出てくることも今では普通になりました。
ウェッジウッドのときの話ではないですが,本人が楽しむことが一番です。
実際,お湯が染み出て底を濡らすことがあったり,上まで入れてしまえば熱くて持てないなんてこともあるわけで,使い出しの際には鍋で茹でて臭いを取る作業をする必要があるなど,非常に手のかかる茶碗だったのですが,その分,非常に愛着がわくようになりました。
我が家において,洗剤を一度も使うことなくお湯で手洗いして使っているのは,この筒茶碗くらいではないでしょうか。
もっとも,鉄瓶がない場合はまずそちらから揃えてみてください↓
南部鉄器の鉄瓶は,帝国ホテルのサイトでこの色違いが売られているのを見てずっと気になっていたのですが,ふるさと納税で鍋敷きとともに購入していて大活躍しています。
沸かしたお湯はまろやかで甘く,カップラーメンやインスタントのみそ汁など,多くの用途に使えますし,ミネラルウォーターを買わずに済む分,長い目でみれば経済的です。
鉄瓶に限らず,鉄製品と言うのは,貧血気味の人が鉄分を補給する目的で使うこともできます。
まとめ
以上,私が自信を持っておすすめするグラスやカップの紹介記事でした。
リーデルやウェッジウッドのような欧米のものの他,国産のものにおいても伝統工芸品に現代ならではのアイディアを付け加えているところがポイントだったように思います。
胃の中に流し込めば,味なんてどんな容器で飲んでも同じだと思っていた私ですが,創意工夫を凝らしたグラスやカップを使うことで,飲むという行為が特別なものに変わりました。
今回紹介したものはどれも,私がおすすめするまでもなく,すべて名品と称えられてきた歴史あるものばかりです。
世の中にはまだ他にたくさんの魅力的な製品があると思いますが,是非,これらも検討の1つに加えていただけたらと思います。