ほとんどの地中海の食事に使われている「オリーブオイル」。
炒めたり揚げたりする以外にも調味料として使えるので,パンやサラダに香りやコクを加えたり,蕎麦や味噌汁に垂らす料理人も多いと聞きます。
料理がおいしくなる上に,身体に良い成分も豊富に含んでいて,オリーブオイルを多量に取っている国では心疾患が少ないそうです。
とはいえ,気合いを入れて百貨店を訪れてみても,値段や味や産地などがバラバラで一体何を買ったらよいのかわかりません。
一体,どのような知識でもって,オリーブオイルを選べばよいのでしょうか。
今回は,そんなときに役立つ知識について学んでいくことにします。
オリーブオイルの種類と生産国
オリーブオイルとひとくちに言っても,厳密には「8種類」もあります。
これらの違いは,主に酸度や製法の違いによるものですが,日本国内では,
- エキストラバージンオイル
- ピュアオイル
の2種類のみが売られているので(ポマースオイルをこれに加えて3種類とする場合もありますが),まずはこの2つの違いを覚えましょう!
このうち,1のみが化学的な処理(溶剤を使った精製)を行っておらず,栄養分は自然そのままで,風味と香りがよいとされるオイルですので,以降でオリーブオイルと言えば,この「エキストラバージンオイル」を指すと考えてください。
地中海原産のオリーブという植物の実から作るので,生産国はスペイン・イタリア・ギリシアを筆頭に,ほとんどが地中海に面した国です(写真はRodrigo Nuno Bragança da Cunha氏による)↓
しかし,それ以外の国であるオーストラリアや,日本でも香川県の小豆島や熊本県の荒尾市などでオリーブが生産されています。
これはどうしてでしょう。
それには気候が関連していて,「年中温かく雨が少ない」地中海性式気候であれば,オリーブさえ持ってきて植えてしまえば育てられるということです(水や温度を管理すればどこでも育てられますが,そこまでしてオリーブを育てる理由はありませんよね)。
同じ経度のところであれば大体同じ風土になりますので,先述した生産地域はすべて赤道から約35度離れた経度35度線上にあります↓
オリーブオイルの製法
オリーブの緑色の実が紫~黒に変わる時期(10月から2月)にかけて収穫されますが,そこから以下のような過程を経て市場に並ぶというわけです↓
収穫→運搬→洗浄→粉砕→練り込み→搾油→澱の除去→保管→瓶詰→出荷
まったく同じ木から採れるオリーブの実を使っていても,収穫のタイミングが異なれば味わいは異なりますし,手作業で1つ1つ摘み取っていけば良質なものだけを選別することができますが,味を重視して道具や機械を導入することもある様子。
収穫したオリーブはすぐに運搬&洗浄され,粉砕まで持っていきますが,ここでも「ディスク式」や「ハンマー式」のどちらの機械を使うかで各農家の判断が問われます。
また最近の農家は,搾油の際に伝統的な方法(石臼+圧搾機)ではなく,「遠心分離」や「シノレア法」などを使って品質の向上を実現しているようです↓
いずれにせよ,オリーブは収穫した瞬間から劣化が始まってしまうため,搾油まではとにかく早く済ませる必要があり,早いところで2,3時間,遅くとも24時間以内には終わらせなければなりません。
なお,「澱(おり)」とは沈殿物のことですが,活性炭素フィルターを通してろ過すれば速く済みますが,その分,微量成分を損なうデメリットもあるため,あえて数ヶ月かけて沈殿させる生産元もあるという話ですから,とにかく手間暇かけて作られていることが伺えます。
オリーブオイルの成分と味
オリーブオイルの成分といっても結局は油ですから,脂肪がほぼすべてで終わりなわけです。
が,ここで注目したいのは脂肪の「種類」と,200種類あるとも言われる「微量成分」にあります。
全体の50~80%を占める,主成分のオレイン酸は一価の不飽和脂肪酸で,不飽和なので安定はしていませんが,一価なので多価のものよりは酸化(劣化)しにくいという,なんとも不思議な成分です。
もっとも,収穫した時点から酸化は始まってしまうので,種の状態で保存がきく他の植物由来の油より扱いづらかったのですが,このオレイン酸が悪玉コレステロールの値を下げ,便秘対策にもなると知られて注目が集まりました↓
参考
逆に悪玉コレステロール値を上げるものがトランス脂肪酸ですが,ちゃんとしたオリーブオイルには含まれません。
オレイン酸以外にはリノール酸やリノレン酸(これらは多価不飽和脂肪酸)も含まれます。
さらに微量成分に含まれる例として,ポリフェノールやオレオカンタール,ビタミンEはそれぞれ,活性酸素を除去したり,抗炎症作用として働いたり,アンチエイジングに良いとされる物質です(例えばピュアオイルでは製造過程でポリフェノールが除去されてしまいます)。
ちなみにオリーブオイルの味は「マイルド・青さ・フルーティー」の3つの軸で考えるとわかりやすいようで,自分でテイスティングする際の参考にしてください↓↓
- マイルド:「軽さ」のことで,普通においしいオイルはこのように形容されます。イタリアの北部に多く,ジェノベーゼに使われるイメージ(カーザリーヴァ種・タッジャスカ種など)。
- 青さ:身体に有効な成分が多いのが特徴(ポリフェノールとかクロロフィル)。イタリアの中部に多い個性的な味で,肉やグリルした野菜に合います(フラントイオ種・モライオーロ種・コラティーナ種・カルペッレーゼ種・ボザーナ種など)。
- フルーティー:バナナやピーチ,トマトのような後味で,日本人に合いやすく,サラダや魚料理に使われます。イタリアの南部に多い(トンダイブレア種・ビアンコリッラ種・イトラーナ種など)。
もっとも,全てのオイルはこの3つのいずれかに分類できるというわけではなく,「マイルドでフルーティー」といった中間に位置するオイルもあるのが普通です。
オリーブオイルの選び方
それでは実際にオリーブオイルを選んでみましょう!
「エキストラバージン」に分類されるオリーブオイルは酸度が0.8%以下のものを指し,できるだけ0.5%以下のもの,理想は0.2%以下のものを選ぶようにと言われますが,酸度の低さだけで品質の優劣が決定されるわけでもありません。
そこでテイスティングも含めて評価することが重要ですが,このときパンに付けて食べるよりも,直接味わってみる方がよいとされます。
とはいえ,実際に蓋を開けてみないとわからないテイスティングは大変ですし,そもそも理想となる味すら定まっていない私のような人間では,おいしいかどうかの判断すら付きません。
そこで,本記事ではあくまで「商品の外観から判断する際に重要となる注目ポイント」についてみていくことにしましょう。
ラベル
オリーブオイルのラベルには選ぶ際の判断材料がたくさん書かれています。
まずなんといっても,Extra Virginの文字があるかどうかですね。
これはイタリア語だと,olio extra vergine di olivaと綴ります。
また,認証マークが付いているものもあり,特に「DOP」や「IGP」といったマークについてはEUのお墨付きということですから,選ぶ際の基準になるでしょう。
もちろん料理人が実際に使っているものも,いわばプロのテイスティングに適ったオイルなわけですから,こちらも十分判断材料の1つになるはずです。
その他,「生産者・瓶詰した業者名・所在地・収穫年度・賞味期限」などに注目しますが,特に自信がある農家だと収穫年度まで記載することもあるそうですが,そこまで丁寧に書かれているものは少ないでしょう。
収穫年度が直近の10月~2月であることを確認し,ない場合であっても賞味期限が1.5~2年程度あればOKです。
値段
オリーブオイルは製造過程に手間がかかるので,安い値段では普通手に入りません。
「1mlあたり1円以上」を最低ラインとして考え,安すぎるものは疑ってかかりましょう。
以下にプロの料理人が推薦しているオリーブオイルをいくつか箇条書きにしてみましたが,どれも中々の値段がします↓
- ボルゲスエルブリ:200mlで1260円
- マンチャンティ:250mlで1029円
- イルレッチェート:250mlで1575円
- サルバーニョ:500mlで1827円
- ルブラン:250mlで1260円
- フレスコバルディ:500mlで3675円
- アルドイノ:250mlで1365円
- カスティロディランピンツェーリ:500mlで3150円
1mlあたりの値段を計算してみると,4~6円の間にどれも収まっています。
「料理人ブランド」ではないですが,プロ仕様のオリーブオイルを選ぶ際はこの値段を1つの基準にして購入しましょう。
外観としては他に「ボトルの材質」などもあり,缶やガラスは劣化しにくく色付きのものであれば遮光もできるなどと説明されているものもありますが,品質のよいオリーブオイルであれば特に対策しなくても変わらないとの話もあります。
どんな良いオリーブオイルであっても開封すれば劣化が始まるため,数ヶ月で使い切れる量を選ぶことの方が重要でしょう。
まとめ
今回の内容を箇条書きにすると,
- 国内にはエキストラバージンオイルとピュアオイルの2種類が存在
- 生産地域は地中海沿岸がほとんどだが,気候が近い国でも行われる
- 収穫から搾油までは迅速に行うが,農家は手間暇かけて製造する
- 成分的にはオレイン酸が豊富で,微量成分は身体に良いとされる
- テイスティングは「マイルド・青い・フルーティー」の3つを軸に行う
- ラベルでは認証マークや生産者や収穫年度などを確認
- 値段は1mlあたり4~6円するものがプロ仕様の基準
となるでしょうか。
是非,上記内容を判断基準に,一生付き合えるオリーブオイルを見つけてみてください!