「ストウブの鍋」は,1974年にフランスのアルザス地方で誕生しました。
ドイツとスイスに接し,パリからは高速列車で2時間ほどかかりますが,山地なので肉を中心をした郷土料理が名物です。
そんな食文化の中で洗練されたストウブの鍋だけに,プロのツールとしてふさわしい機能と耐久性,さらには優れたデザイン性を備えており,一般家庭においても安心して使うことができます。
ストウブの鍋の魅力の1つに無水調理を可能にすることが挙げられますが,初めて食べると多くが感動する美味しさというのは,一体どのようにして生み出されるのでしょうか。
我が家には「ピコ・ココット ラウンド」がありますので,それを使ってストウブ鍋の特徴や調理法についてみていきましょう!
ストウブ鍋の特徴について
ストウブの鍋は,その構造に特徴があります。
見た目が可愛いところも推したいところですが,何より
- エマイユ(ホーロー)加工
- 蓋の部分
の2つに,大きな秘密が隠されているわけです。
エマイユ加工
まずはエマイユ加工について解説しますが,鍋の主材料である鋳鉄(鉄・炭素・ケイ素・リンの合成鉄)の表面に,液状の「エマイユ」を吹き付けた後,800℃の高温で何度か燃焼させて完成させます。
エマイユはガラスを原料とする物質であるため,鍋が酸に強くなり,結果として耐久性のUPにも繋がるわけです。
鍋の内側に使うと,食材の臭いが移りにくくなりますし,底に使えば全ての熱源(ガスの直火やオーブン,IH)に対応できるようになります。

ピコ・ココット ラウンドの,黒マットの色合いをしたエマイユ加工を触ってみましょう↓
ザラザラしているので,細かな凹凸があることがわかりますが,これはストウブ独自の加工で,
油が馴染みやすい!
焦げ付きにくい!
といった評判はこの工夫から生まれてくることになります。
蓋
ストウブの鍋の秘密は,蓋にも隠されていました。
持ち手に使われる金属はニッケルか真鍮製で,250℃までの調理に対応できますが,持つとズッシリくる重みの他,「ピコ」と呼ばれるでっぱりもまた目立っています。
鍋が重いというのはマイナスの側面も持ち合わせているものの,蓋が内部の蒸気で持ち上がりにくくなるため,密閉しやすくなるとともに保温性にも貢献してくれるわけです。

ちなみにですが,他社製品と比べてみた際,ストウブの鍋は50%ほど蒸気を逃がしにくかったそうです。
例えば,1リットルの水が中に入った状態で熱して,他の鍋が0.5リットルになってしまったのに対し,ストウブのココットは0.75リットル残っていました。
他の鍋と並べて加熱してみると,他社製の鍋は蓋がカタカタ言い出しては,湯気(つまり水分)が噴出してきやすいように感じます。
次に,商品名にもなっている「ピコ」についてですが,これは蓋の裏面に整然と並んでいる突起のことを指し,後述するように,うまみを逃さず柔らかく蒸すことを可能にするための工夫です↓
この「蓋」とその前に紹介した「エマイユ加工」の2つが揃って初めて,今回のテーマである「無水調理」が可能になります。
これを「アロマ・レイン」などとカッコよく呼ぶことがあり,どういうものなのか,ストウブの取扱説明書から引用してみましょう↓
「アロマ・レイン」とは,食材から出たうまみを含んだ水分が蒸気に変わり,鍋内で自動的に対流し,ピコによって食材にまんべんなく降り注ぐことである。食材本来のうまみを最大限に引き出し,ふっくらと仕上げる。
それでは,次章で無水調理を含む調理法についてまとめていきたいと思います。
ストウブ鍋を使った無水調理法
ストウブ鍋が得意とするのは,何と言っても「蒸し」です。
それに「焼き・炒め・煮る」を組み合わせることで,幅広い食材を美味しく調理することができます。
さて,一般的に何かを蒸そうと思ったら多くの水を必要とするものですが,ストウブは水を使わずに調理することが可能です。
この不思議について理解するために,ミネストローネを作ってみましょう!
2~3人前を18cmの鍋で作ることにしますが,材料は,
ミネストローネの材料
玉ねぎ1個,ニンジン1/3本,トマト2~3個,カボチャ1/8個(200g),セロリ1/3本,ベーコン50g
です。
まずは,野菜を全て1cm角,ベーコンは5mm幅に切ります。
適当でも構いませんが,トマトとカボチャは別にまとめておくと,この後が少し楽になるでしょう。
次に,ストウブ鍋にオリーブオイルを引いて中火で熱します。
玉ねぎ・ニンジン・セロリ・ベーコンをよく炒めるのですが,このときに立ち上るオリーブオイルの香りを楽しみましょう。
野菜(特にニンジン)がしんなりしてきたら,トマトとカボチャを投入して塩を小さじ1程度ふり,ひと混ぜしたら蓋をしましょう↓
蓋のすき間から湯気が出てきたら即座に極弱火にして,そのまま20分加熱しますが,このときに音を聞いてみてください。
グツグツ言っていて,まるでご飯を炊いているときの音に近い音がするはずです。
その後,火を止めて,冷めるまで置いたら完成になります。
食べるときには再加熱して温めるようにしますが,素材の甘みがたっぷりで,どの具材も柔らかく,数十分で作ったものとは思えない出来栄えです↓
さて,こんなに立派な野菜スープが出来上がったにもかかわらず,水はどこにも使っていませんでした。
それなのに,蒸して煮ることまでできてしまったのは,食材に含まれる水分を利用したからに他なりません。
人間の体の約6割は水ですが,野菜においても成分の多くを占めているのは水分です。
調理の途中で塩をふりかける作業がありましたが,これは食材から水分を出しやすくする目的で行いました。

ストウブ鍋を使うと,「蒸し焼き」は焼き目を付けてから素材の水分を利用して,香ばしくジューシーに仕上げることができますし,「蒸し炒め」なら炒めて素材の水分を出やすくした上で蒸し上げられるので,カレーも水なしで完成できます。
一度蓋をした後は食材に触れることがないので煮崩れせず,野菜を茹でることもないので栄養素を逃がさないところもストウブの魅力と言えるでしょう。
ストウブの鍋を扱う際の注意点
ストウブ鍋の取り扱いですが,蓋や持ち手のすべてが熱くなりますので,鍋つかみの類(ふきんや軍手でも可)は必須です。
また,エマイユ加工を傷つけないために,調理器具はゴムやシリコンまたは木でできたものを使う必要があります。
洗う際は柔らかいスポンジを用い,洗い終えた後は水滴を残さず拭き取ったり,「シーズニング」と呼ばれる,油を鍋に塗って馴染ませる工夫をしたりして寿命を延ばすことも必要です。
特に「火加減」については,ストウブ鍋の扱いに慣れるまでは悩まされることが多く,中火(鍋の底に火が触れるくらい)と極弱火(鍋底に火が当たらないほどのとろ火)の2つを上手く使いこなせないと焦がしてしまう可能性があります↓
上のような状態になってしまった場合,スチールたわしなどは使えませんので,焦げた部分が浸かるくらいの水に重曹を大さじ3くらい投入し,中火で煮立てたら火を止めてしばらく放置しておかなければなりません。

しばらくすると焦げが浮いてくるので,木べらなどで剥がせるところをできるだけ取り除いてから,普通に洗剤で洗うときれいになります↓
しつこい焦げの場合はこの作業を繰り返しますが,上のものは2回もやると元通りになりました。
とはいえ,変に臆して弱火ばっかりにしているようでは美味しさを引き出せません。
ここはフランスの料理人っぽく大胆にいきましょう(最初は水分が多く出てくる煮ものなどを中心に練習するのがおすすめです)!
ストウブ鍋の種類について
ストウブの鍋にはいくつか種類があり,最もポピュラーな「ピコ・ココット」であっても,その形によって,丸型の「ラウンド」と楕円形の「オーバル」にさらに分けられます。
ちなみに,「ココット」とは蓋つきの小型耐熱鍋のことを表し,口径の大きさや鍋の外観の色合いで多くのバリエーションが生み出されるわけです(今回の記事に登場するのは「カンパーニュ」と呼ばれるカラーです)。
なお,「ラウンド」であれば18cm・20cm・22cmが,「オーバル」だと17cmや23cmが使いやすくて人気と聞きます(このくらいのサイズだと,重さは3~4kg程度になります)。
とはいえ,こればかりは家族の人数にもよりますので,以下のデータに合わせて各自の状況に合わせたものを買うのが吉です。
ココットラウンドのサイズと容量
- 10cm:0.25リットル,1人分
- 14cm:0.8リットル,1~2人分
- 18cm:1.7リットル,2人分
- 20cm:2.2リットル,2~3人分
- 22cm:2.6リットル,3~4人分
- 24cm:3.8リットル,4~6人分
上の容量は満水容量を示しますが,実際は鍋の6~7分目の量で調理しないといけないことに注意しましょう。
水を満タンに入れてしまうと蒸気が対流するスペースがなくなりますし,逆に,鍋内で何も存在しない空間が大きすぎると今度は焦げやすくなります。
「大は小を兼ねる」という格言はストウブには通用せず,大きい鍋は少量の調理に向きません。
ちなみに,ストウブの日本における輸入元はツヴィリングです↓
上記サイトで購入すると日本語の取扱説明書が付いてきますが,そこには生涯補償を受けられるシリアルナンバーが書かれていました。
並行輸入品だと比較的安く買うことができますが,その場合は補償登録ができません。
どちらの購入方法にも魅力があるので,よく考えて購入してください(ふるさと納税の返礼品になっていることもあります)↓
まとめ
以上,ストウブの特徴と無水調理を中心にまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
ストウブ鍋を使った調理は,フライパンで炒めるよりも簡単で美味しいと言われます。
基本,材料を焼いて塩をふって火にかけたら完成するので,余り物を使って調理する際にも重宝するものです。
野菜は水分や甘み(砂糖)の代わりに,肉や魚が出すコクはダシの代わりになるので,手間と調味料が節約できてしまうところも興味深いところでしょう。
今回はミネストローネを紹介しましたが,ハンバーグを作ってみても,フライパンで調理した場合と比べてふっくらジューシーに仕上がります。
今回紹介した調理法以外にも,ごはんを炊いてみたり,ホットサンドやアイスまで作れてしまうので,各自で研究を重ねてみてください!
最後までお読みいただき,ありがとうございました。